コラム

第11回 地方創生と多文化共生

山脇啓造

3月4日のNHKの夜のニュース番組が、外国人が住民登録に含まれるようになった2013年から2017年までの統計を調べ、全国の市区町村の75%で外国人が増加していることを報道しました。これまで、主に東海地方の製造業で働く外国人労働者が注目されてきましたが、ここ数年は、人口減少が進む地方の小規模自治体においても外国人が急速に増加していることが明らかになりました。その背景には、製造業だけでなく、農業や漁業など多様な分野で働く技能実習生が全国で急増していることがあります。また、週28時間まで働くことが認められている留学生も同様に急増しています。ニュースの後半では、永住外国人が増加傾向にあることも示され、島根県出雲市では、定住外国人の増加をめざした政策をとっていることが紹介されました。

このニュースが流れた同じ週に、外務省と国際移住機関が共催した国際会議が「外国人と進める地域の活性化」をテーマに都内で開かれました。この会議では、岡山県美作市の萩原誠司市長、北海道東川町の町立日本語学校の三宅良昌校長などが参加したパネル討論が開かれ、筆者がモデレータを務めました。人口約3万人の美作市では、2015年にベトナム国立ダナン大学と協力協定を結び、ベトナムからの技能実習生を中心とした外国人の受け入れ体制の整備に取り組んでいます。一方、人口約8千人の東川町はやはり2015年に、全国初となる公立日本語学校を設立し、留学生の受け入れに力をいれています。

そして、3月13日のNHKの朝のニュース番組で、人口約3万人の安芸高田市が外国人の移住や定住を促進する計画を全国に先駆けて取りまとめたことが報道されました。このニュースでは紹介されませんでしたが、この計画は、安芸高田市として2回目となる多文化共生推進プランであり、筆者はプラン策定の会議の委員長を務めました。プランの基本理念は「多様な市民による持続可能なまちづくり」です。

政府は、2014年に地方創生担当大臣を置き、地方創生の長期ビジョンや総合戦略を策定し、「人口減少に歯止めをかけ、2060年に一億人程度の人口を確保する」ことを目標に掲げていますが、人口減少はむしろ加速しているのが現状です。2013年から2017年までに、日本の総人口は60万人以上減少していますが、その内訳をみると、日本人人口は100万人以上減少し、外国人人口は約40万人増加しています。政府は、今夏までに外国人労働者の受け入れ拡充策を取りまとめることとしていますが、地方創生の観点から自治体が外国人に注目するのは自然の流れともいえ、今後、そうした観点から多文化共生に取り組む自治体が全国に広がるかもしれません。

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