山脇啓造
日本における多文化共生社会の形成に関連するニュースを選びました。
日本で新型コロナウイルス感染者が1月に初めて確認され、これ以降、海外と同様に国内の感染者も急増しました。その結果、人の国際移動は大きく制約され、来日する外国人は激減しました。国内で暮らす外国人も、日本人同様にコロナ感染のリスクに直面するとともに、しだいに生活困窮者が増え、この一年、各地の自治体や国際交流協会、市民団体などが支援活動に力を入れました。
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、3月10日に緊急対応策(第2弾)を策定しました。2月13日の第1弾では、「国民及び外国人旅行者への迅速かつ正確な情報提供」が掲げられていましたが、第2弾では、「在留外国人、外国人旅行者に対して、多言語で適切迅速な情報提供を行う」ことが示され、ようやく在留外国人への情報提供が含まれました。
「多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現」を目的とする日本語教育推進法(2019年)に基づき、日本語教育の基本方針が閣議決定されました。地方自治体には、同基本方針を参酌し、基本方針を策定する努力義務が課されています。日本語教育の基本方針を国が策定するのは初めてのことです。
文部科学省は、上述の日本語教育の基本方針に基づき、「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」を策定しました。外国人の子どもの就学について、初めて法律を根拠にした指針となります。教育委員会が住民基本台帳部局等と連携し、学齢簿の編製にあたり外国人の子どもの就学状況を一体的に管理・把握することや、高校への進学促進が示されました。
公共の場所で外国人等に対するヘイトスピーチを繰り返した者に刑事罰を科す川崎市の「差別のない人権尊重のまちづくり条例」(2019年)が7月に全面施行されました。条例は昨年12月に一部施行されましたが、罰則は前例がないことから周知期間が設けられました。道路や公園などの公共の場で拡声器や看板、ビラなどを使ってヘイトスピーチを行うことを禁じています。
外国人在留支援センター(FRESC)が東京・四谷にオープンしました。東京出入国在留管理局、東京法務局人権擁護部、日本司法支援センター、東京外国人雇用サービスセンター、東京労働局外国人特別相談・支援室等4省庁8機関が入居しています。総合案内には、日本語と英語、中国語を話せるスタッフが常駐し、タブレット端末による遠隔通訳で、他の8言語にも対応しています。また、コロナ関連の電話相談(14言語)を9月1日に開始しました。
出入国在留管理庁は,国や自治体が外国人向けに情報発信を行う際に、やさしい日本語を用いるよう、文化庁とともに、「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を策定しました。ガイドラインは書き言葉に焦点をおき、まず日本人にとってわかりやすい文章に直した上で、外国人にとってもわかりやすい文章にさらに改めることが示されています。
総務省は「地域における多文化共生推進プラン」(2006年)を14年ぶりに改訂しました。改訂版は、多文化共生施策の今日的意義の一つに「多様性と包摂性のある社会の実現による『新たな⽇常』の構築」を掲げると共に、施策の4番目の柱として、「地域活性化の推進やグローバル化への対応」を新たに設けました。
東京都が一般財団法人「東京都つながり創生財団」を設立しました。多文化共生社会づくりとボランティア文化の定着や町会・自治会等の支援など共生社会づくりを推進する事業に取り組み、地域コミュニティの活性化を目指します。多文化共生社会づくりでは、外国人相談とやさしい日本語の普及啓発に取り組みます。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が、クラスター対策を提示する緊急提言を発表し、「外国人コミュニティを支援し、多言語・やさしい日本語での情報の発信および伝達、相談体制を多元的なチャンネルで進めていく」ことを要請しました。これ以降、東京都知事が多言語とやさしい日本語で呼びかける動画を制作するなど、自治体の外国人への情報発信が強化されました。