コラム

第52回 2024年多文化共生10大ニュース


山脇 啓造

日本における多文化共生社会の形成に関連するニュースを選びました。

外国人集住都市会議が愛知県小牧市で開催(1月)
外国人住民の多い市町の首長からなる外国人集住都市会議が、愛知県小牧市で開催されました。今回の会議は、人口減少社会における外国人材の受入れという観点に立った初めての会議でした。「人口減少社会の危機感と多文化共生社会のビジョンを共有していく」ことを国に求める「こまき宣言」を採択して、会議は幕を閉じました。

入管庁がオール・トゥギャザー・フェスティバルを初開催(1月)
出入国在留管理庁は、毎年1月を外国人との共生に係る啓発のための「ライフ・イン・ハーモニー推進月間」に定めると共に、同月21日に東京国際交流館(東京都江東区)で、「楽しむ!学べる!世界の文化と共生社会」をテーマに「オール・トゥギャザー・フェスティバル」を初開催しました。様々な展示やステージ、ワークショップなどが行われ、約2500人が来場しました。

鈴木康友前浜松市長が静岡県知事に就任(5月)
外国人集住都市会議や欧州評議会のインターカルチュラルシティプログラムへの参加などを通じて、浜松市長として日本の多文化共生を長年リードしてきた鈴木康友氏が、20246月に静岡県知事に就任しました。鈴木知事はさっそく8月に開催された全国知事会で国に対する多文化共生の提言を検討することを提案し、11月に「外国人の受入と多文化共生社会実現プロジェクトチーム」を立ち上げました。

総務省と消防庁が災害発生時における外国人の避難支援について通知を発出(7月)
総務省国際室と消防庁国民保護・防災部防災課が中心となって、各都道府県に向けて災害発生時における外国人の避難支援について通知を発出しました。この通知がユニークなのは、通知先が各都道府県の住民基本台帳担当部局長と多文化共生主管部局長さらに防災主管部局長の三者に向けたものであり、自治体の関係部局の連携をめざしたものである点です。

教科書バリアフリー法が改正され、外国ルーツの児童生徒も音声教材の利用が可能に(7月)
2008年に制定された「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(教科書バリアフリー法)の一部が改正され、719日に施行されました。その結果、障害のある児童生徒のみが使用可能であった音声教材(マルチメディアデイジー教科書)を、日本語指導が必要な児童生徒も利用可能になりました。

外国人支援コーディネーター養成研修がスタート(8月)
出入国在留管理庁は国や自治体が設置する外国人住民向けの相談窓口で働く人を対象とした外国人支援コーディネーター養成研修を今年度から開始しました。60時間程度のオンライン研修、各職場での実践、対面の集合研修の3段階に分かれ、修了時に認定テストを受け、合格者は「外国人支援コーディネーター」として認証されます。

文科大臣が全国の日本語学校22校を日本語教育機関として初めて認定(10月)
日本語教育機関認定法に従い、文科大臣は日本語教育課程を適正かつ確実に実施できる日本語教育機関を初めて認定し、1030日に公表しました。2024年度1回目の認定審査には72校が申請し、22校が認定されました。法務省告示校(同省が定めた基準に適合した日本語学校)634校(2023年11月現在)は20293月までに文科大臣の認定を受ける必要があります。なお、20244月に文化庁国語課の日本語教育業務は文科省に移管され、日本語教育課が新設されました。

外国人集住都市会議がオンラインシンポジウムを開催(11月)
前述の外国人集住都市会議が笹川平和財団との共催でオンラインシンポジウム「多文化共生は全国の課題へ」を実施し、約400名の聴衆が視聴しました。岡山県総社市、三重県鈴鹿市、岐阜県可児市の市長や入管庁、総務省、文科省、厚労省の部課長が登壇したほか、3名の外国人住民や企業、地域の日本語教育関係者も登壇し、関係省庁に地域の実情を訴えました。

やさしい日本語普及連絡会が高校生を対象とした「やさしい日本語」作文コンテストを実施(12月)
一般社団法人やさしい日本語普及連絡会が主催する第1回「やさしい日本語」ユース作文コンテストの募集が8月から9月にあり、11都県の高校生21名の応募がありました。応募者はやさしい日本語をテーマにしたミュージックビデオ「やさしい せかい」を視聴し、考えたことを4000字以内の作文にまとめました。129日に審査結果が公表され、山形県の高校2年生が最優秀賞を受賞しました。

文科省による日本語教員試験がスタート(12月)
前述の日本語教育機関認定法に従い、文科省は1117日に初めて日本語教員試験を全国8地域で実施し、1220日に結果を公表しました。受験者17,655人のうち、合格者は11,051人で、合格率は62.6%でした。試験に合格し、実践研修を修了した「登録日本語教員」は認定日本語教育機関で日本語教育課程を担当することが可能となります。

<番外編>
埼玉県川口市に暮らす外国人住民をめぐって国会で質疑(12月)
2023年後半以降、SNSを中心に埼玉県川口市で暮らすクルド人(トルコの少数民族)の不法行為や地域社会での軋轢に関する発信が過熱し、クルド人住民に対する差別的な言動も増える中、12月10日には衆議院予算委員会で、18日には同法務委員会でクルド人住民に関する質疑がありました。同様な質疑は埼玉県議会や川口市議会でもありました。

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