CLAIR(クレア)一般財団法人自治体国際化協会

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~テイラー・アンダーソン記念碑への献花~

 石巻市内で外国語指導助手(ALT)として活躍し、東日本大震災の津波で犠牲となった米国出身のテイラー・アンダーソン=当時24歳=を追悼するために今年4月16日に石巻南浜津波復興祈念公園の一角に記念碑が設置されました。
 5月19日、記念碑への献花のためクレアを代表して南光院常務理事・倉持経済交流課長が現地を訪れました。途中降っていた雨が、現地に到着する頃にはすっかり止んで薄日が差してしました。テイラーさんが、私たちを優しく迎え入れてくださったのだと強く感じました。
 公園の入り口近くにあるテイラーさんの記念碑は祖国アメリカの方角を向いて静かに建っていました。私たちは、テイラーさんの笑顔の写真と「Live Your Dream 夢を生きる」という文字が刻まれた記念碑にテイラーさんへの追悼と感謝の気持ちを込めて献花をいたしました。

テイラーさんの記念碑近影 記念碑への献花の様子

写真左:テイラーさんの記念碑近影       写真右:記念碑への献花の様子

 テイラーさんは、1986年に米国バージニア州で生まれ、大学卒業後の2008年に「日米の懸け橋になりたい」という志をもってJETプログラムのALTとして来日し、石巻市内の7つの小中学校で英語教育に従事され児童からも大変慕われていました。大震災の地震発生直後に市立万石浦(まんごくうら)小学校の児童を避難させた後、自転車で帰宅する途中に津波の犠牲となりました。
 震災後に設立されたNPO法人「テイラー・アンダーソン記念基金」(共同代表:テイラーさんの父アンディさん、藤崎一郎さん(元駐米大使))が石巻市内の小中学校を中心に「テイラー文庫」と名付けた本棚と書籍の寄贈を続けられ、現在日米で約30ヵ所に設置されています。こうした活動は被災地支援を通じた日米間の交流促進にも大きく貢献しており、テイラーさんの遺志を実現しているものです。
 記念碑の設置された石巻南浜津波復興祈念公園は、津波とその後に発生した火災の延焼により500人以上が犠牲となった南浜地区約38.8haを転用し、追悼と震災の記憶や教訓の伝承・発信を目的に整備されました。園内には津波伝承館をはじめ多くの施設もあり、テイラーさんを含む犠牲者の皆様のお名前が記された石巻市慰霊碑も建立されています。
 津波伝承館で主任解説員をされている三浦さんは、元中学校の教員でテイラーさんと一緒に仕事をされたご経験をお持ちでした。三浦さんの「テイラー先生には大変よくやっていただいた。記念碑ができたときは涙が出るほどうれしかった」というお言葉が心に残りました。

石巻南浜津波復興祈念公園(奥が津波火災の震災遺構、市立門脇小学校) 津波伝承館での説明の様子

写真左: 石巻南浜津波復興祈念公園(奥が津波火災の震災遺構、市立門脇小学校)
写真右: 津波伝承館での説明の様子

 今回、記念碑の献花の後に関係先を訪問し、テイラーさんが地元の皆様にいかに愛され、感謝されていたかを知りました。テイラーさんのようなALTがおられたことをクレアとして誇りに思うと同時に、JETプログラムの意義を再認識いたしました。

 今回の記念碑往訪に当たっては、現地で様々な皆様に丁寧なご対応を頂きました。この場をお借りして御礼申し上げます。
そのうち、特に宮城県の復興・危機管理部復興支援・伝承課:伊藤主幹兼企画員およびに商工観光部国際政策課:廣澤主査のお二人には現地にご同行を頂き、親切かつ細かなことにも目の行き届く形でご案内を頂きました。

 また、お二人には石巻市中心部にあるマーケット「いしのまき元気いちば」ご案内頂きました。1階は、旬の鮮魚、水産加工品から、農産品、地元の物産品、三陸地域や震災復興応援地域の特産品などで充実した売り場となっており、地元の皆様も含め多くの来店客で賑わっていました。また、2階には座席数140席のフードコート「元気食堂」も併設されており北上川に面した開放的ですばらしい眺望のテラスがあります。こちらで石巻ならではの魅力的なメニューを堪能いたしました。
 石巻のまちとしての豊かさを感じられる場所にご案内頂き、大変有意義な機会となりました。お二人には改めて御礼申し上げると共に、ご寄稿を後掲させていただきます。
いしのまき元気いちば入口 フードコート・元気食堂(北上川を挟んで中瀬公園・石ノ森萬画館)

写真左: いしのまき元気いちば入口
写真右: 同上フードコート・元気食堂(北上川を挟んで中瀬公園・石ノ森萬画館) 伊藤様(左奥)、
廣澤様(左手前)とご一緒した昼食風景



テイラー・アンダーソン記念碑の建立に当たって

宮城県復興・危機管理部 復興支援・伝承課震災伝承班 伊藤 崇宏
※交流支援部経済交流課[H22/4-H23/3]
ニューヨーク事務所[H23/4-H24/3] に在籍


 2011年3月11日、東日本大震災が発生した当時、私は自治体国際化協会東京本部にいました。あれから12年以上経過していますが、テイラー・アンダーソンさんが津波でお亡くなりになったことに対する心の底からの悲しみは、一生涯消えることはありません。
同氏の遺志を継ぎ、日米をつなぐ様々な国際交流活動が絶え間なく展開されている、テイラー文庫基金を中心とした関係者の皆様の御尽力に、心から敬意を表します。

 現在、私は震災の記憶・教訓を伝承する部署で、石巻南浜津波復興祈念公園に所在する「みやぎ東日本大震災津波伝承館」の運営を担当し、最大の被災県である我が県の責務として、国内外の多くの方々に、震災当時いただいた御支援への感謝を伝えるとともに、震災の記憶・教訓の伝承を通じ、いつどこで発生するか分からない災害への防災・減災に役立てていただけるよう努めています。

 奇しくも、私がクレアから帰任してちょうど10年目の節目の年となる今年、テイラーさんの記念碑が祈念公園内に建立されました。この時期に、テイラーさんや同氏にゆかりのある方々とこうした形で関わることができたことに、何か運命を感じています。

 この度の記念碑の建立を受け、特に米国からのお客様やJETプログラム参加者の方々に対して、テイラーさんの足跡やその遺志を引き継いだ日米交流の絆の証を添えて伝えるなど、私自身もテイラーさんが目指した「日本と米国の架け橋」の一端を担っていきたいと思います。



震災後10年、NYでの想い

宮城県経済商工観光部 国際政策課国際政策班 廣澤 由貴
※交流支援部経済交流課[H31/4-R2/3]
ニューヨーク事務所[R2/4-R4/3] に在籍


 東日本大震災から10年となる2021年3月、私はクレアニューヨーク事務所に勤務していました。時はパンデミック真っただ中。対面での追悼式等ができない中、東日本大震災をテーマとするドキュメンタリー映像の上映会とパネルディスカッションをオンラインで実施しました。
 イベントでは、テイラーさんの生涯を追ったドキュメンタリー「Live Your Dream」や元JETプログラム参加者が東北の復興支援のために制作してくださった作品「Tohoku Tomo」ほか多数の震災や東北の復興をテーマにした作品を上映しました。イベントの運営には多数の元JET参加者がボランティアで協力してくださり、震災当時のみならず、10年経った後も大勢のJET参加者が復興に心をかけてくださっていることに感銘を受けました。
 テイラー・アンダーソン記念基金をはじめ、こうした絆は震災によって結ばれたとも言えるのではないでしょうか。私たちには、震災の悲しみと教訓を忘れずに、この絆を大切にはぐくんでいく使命があると、記念碑の訪問に気持ちを新たにいたしました。




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