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vol.365「花の都に広がる日本の春の風景」
__________________________________ ■□■□ □■□ CLAIRメールマガジン vol.365(2025年5月16日) ■□ 「花の都に広がる日本の春の風景」 □  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ T O P I C S ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ≪海外事務所コラム≫ 【パリ事務所】花の都に広がる日本の春の風景 【シンガポール事務所】シンガポールの渋滞緩和政策 【ソウル事務所】韓国で見る桜 【シドニー事務所】AIを活用したオーストラリアの地方自治体の成功事例 【ニューヨーク事務所】身近で感じる歴史、ルーズベルトアイランド 【北京事務所】見るだけでなく、体験して深く学べる、北京市の体験型観光 【ロンドン事務所】桜がつなぐ縁 □■━━━━━━━━━━...‥‥...━...‥‥...━...‥‥...━━━━━━━━■□ 海外事務所コラム □■━━━━━━━━━━...‥‥...━...‥‥...━...‥‥...━━━━━━━━■□ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【パリ事務所】花の都に広がる日本の春の風景 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 花の都に広がる日本の春の風景 フランスの春のニュースでは、東京で満開を迎える桜や、お花見を楽しむ人々の姿 が毎年のように取り上げられます。その影響もあり、「SAKURA」「HANAMI」といった 言葉は、今やフランスでもそのまま通じるほど、広く知られるようになってきました。 日本ではあまり知られていないかもしれませんが、パリ近郊にも桜の名所がいくつ もあります。セーヌ川沿いやトロカデロ庭園など、パリを象徴する風景の中に咲く桜 は、まるで絵画のように美しく、多くの人々の心をとらえています。 フランスにも昔から、公園や庭園で季節の花を楽しむ文化がありますが、日本のよ うに桜の下に集まり、宴を楽しむような"花見"の習慣は、もともと一般的ではあり ませんでした。しかし、日本文化の人気の高まりとともに、フランスでも桜を楽しむ イベントが増え、最近ではピクニックをしながら花見を楽しむ人々の姿も見られるよ うになっています。 日本では、桜はただの「きれいな花」ではなく、散り際の儚さが人生の美しさと重 なり、俳句や和歌といった芸術にも深く結びついてきました。フランス人は歴史や文 化を重んじる国民性を持っており、日本の桜の背景にある精神性にも、どこか共鳴し ているのかもしれません。 (パリ事務所 所長補佐 関野) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【シンガポール事務所】シンガポールの渋滞緩和政策 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ シンガポールは、都市国家としての特性を活かし、渋滞緩和を実現するために独自の 政策を展開しています。今回は、代表的な3つの取り組みをご紹介します。 1.自動車所有権利証書(COE : Certificate of Entitlement)取得の義務化 シンガポール政府は、車両台数の規制を目的に、自動車を購入する者に10年間の車 の保有と使用を認める「自動車所有権利証書(COE)」の取得を義務付け、この権利を 購入しなければ新規の自動車購入ができないこととしています。これにより国内の総 車両台数(オートバイやバス等を含む。)は、長年にわたり約100万台を維持しており、 他の東南アジア諸国で見られるような大渋滞の発生を抑制しています。 COEは、オークション方式で毎月2回販売されますが、近年落札価格が高騰しており、 2025年4月(1回目)の自動車(1,600cc以下)のCOE落札価格は97,724シンガポール ドル、日本円にすると1,000万円以上という高額で落札されています。 2.電子道路課金システム(Electronic Road Pricing) シンガポール政府は、道路の通行料金を自動的に徴収する制度である「電子道路課金 システム(ERPシステム)」を導入しています。特定の時間帯に渋滞が発生しやすい道 路で通行料金を課すことで、運転者が通行料金の支払いを避け別のルートを選択するこ とにより、市街地などの交通渋滞が緩和されています。 3.オフピークカー制度(Off-Peak Car Scheme) 平日は午後7時から午前7時のみ、土日祝日は終日制限なしで運転できる「オフピー クカー」も、ピーク時の渋滞を緩和するための制度です。オフピークカーとして利用す る場合は、COE価格の減額などの優遇を受けることができます。オフピークカーは赤い ナンバープレートを付けることで区別されています。 こうしたシンガポールの取り組みは、都市型社会の交通問題の解決策として世界中か ら注目されています。さらに、最近では、次世代ERPシステムへの移行が進められるなど、 ますます進化を続けていくシンガポールの渋滞緩和政策に、今後も目が離せません。 (シンガポール事務所所長補佐 上田) 出典: ・クレアシンガポール「シンガポールの政策(2024年度改訂版)」 < https://www.clair.org.sg/wp-content/uploads/2025/03/b19dc96322d2bda2fb19eca1b57828f0.pdf 〉 ・シンガポール陸上交通省「Motor Vehicle Population By Vehicle Type」 < https://www.lta.gov.sg/content/dam/ltagov/who_we_are/statistics_and_publications/statistics/pdf/MVP01-1_MVP_by_type.pdf 〉 ・シンガポール陸上交通省「Results for APRIL 2025 1st Open Bidding Exercise」 < https://onemotoring.lta.gov.sg/content/onemotoring/home/buying/coe-open-bidding.html > ・シンガポール陸上交通省「Electronic Road Pricing (ERP)」 < https://onemotoring.lta.gov.sg/content/onemotoring/home/driving/ERP/ERP.html > ・シンガポール陸上交通省「Off-Peak Car Scheme (OPC)」 < https://onemotoring.lta.gov.sg/content/onemotoring/home/buying/vehicle-types-and-registrations/car/off-peak-car-schemes.html > ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ソウル事務所】韓国で見る桜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4月10日、ソウル市内の汝矣島(ヨイド)に行くと、漢江(ハンガン)を望む道路 一面に咲き誇る満開の桜と、桜を楽しむ人々を見ることができました。 国内有数のお花見スポットとして知られる汝矣島ですが、国会議事堂がこの付近に 所在していることから、4月初旬は桜が満開の直前の時期でしたが、大統領の罷免の 是非を判断する憲法裁判所の判断の直前であったことから、付近一帯が一時通行禁止 になるなどの措置が取られ、物々しい雰囲気となっていました。 筆者が訪れた4月10日は、通行禁止が無事に解除となり、桜が美しく力強く咲き誇 る様子を見ることができました。汝矣島公園一帯の、約1,400本の桜がトンネル状に並 ぶ様子を見に、4月8日~4月12日の期間中に約303万人もの人が訪れたと報道されて います。 また、桜の品種はソメイヨシノが多く、日本でも見慣れた淡いピンク色の花びらを 韓国でも見ることができます。大盛況の韓国のお花見ですが、一方で、やはり日本と 異なる点もあります。韓国では家族や友人達と桜並木を散歩しながら写真を撮るスタ イルが主流となっており、日本のようにシートを広げて、宴会をする人々を見ること はほとんどありません。 異国で見る桜は、日本で見るものとは一味違った印象を受けるかもしれません。開 花の時期も日本より一週間程遅いので、来年の桜の観覧は韓国で行ってみてはいかが でしょうか。 (ソウル事務所 所長補佐 佐岡) < https://www.topstarnews.net/news/articleView.html?idxno=15641244 > < https://www.stardailynews.co.kr/news/articleView.html?idxno=480832 > ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【シドニー事務所】AIを活用したオーストラリアの地方自治体の成功事例 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2025年3月12日、シドニーで開催された「地方自治体テクノロジーリーダーシップサ ミット」(※1)では、オーストラリアの地方自治体におけるAIの活用事例が紹介され ました。サミットでは、AIを活用した自治体の取り組みが議論され、その中でも特に 注目を集めたのがビクトリア州ヤラ・レンジズ・カウンシルの事例です。 同自治体では、都市開発に関する許可業務にAIを導入し、申請者からの問い合わせに AIが自動で対応できるようにしました。従来、申請方法はホームページを通じて案内し ていましたが、ルールの複雑さから1日約50件の問い合わせが寄せられ、窓口や電話対 応に1件あたり5~10分を要していました。特に審査担当の職員は、問い合わせ対応に 多くの時間を割かれ、本来の業務に十分な時間を確保できない状況が続いていました。 この課題を解決するため、同自治体はAIプラットフォームを開発し、過去の問い合わせ 内容を分析してAIに学習させました。また、AIが申請者に回答を提供する際、根拠とな る法令や関連データを表示する機能を加えたことで、問い合わせ件数のみならず、不備 のある申請書の数を大幅に削減することに成功しました。 AIの導入は、業務負担の軽減に加え、業務の効率化と生産性向上という大きな利点を もたらします。しかし、自治体の予算には限りがあるため、費用対効果も重要なポイン トです。住民からの問い合わせ対応にAIチャットボットを活用している南オーストラリ ア州ウェスト・トレンズ市は、従来の手法であれば7万2,000豪ドル(約720万円)を要す るところ、AIの導入により、年間運用コストをわずか4,080豪ドル(約40万8千円)に抑 え、大幅なコスト削減を実現しています。 AIを活用することで、業務負担の軽減と効率化を実現し、住民サービスの向上に寄与 しているオーストラリアの地方自治体の事例は、日本の地方自治体にとっても参考とな るのではないでしょうか。 (シドニー事務所 所長補佐 西村) (※1)Local Government Tech Leadership Summit < https://alga.com.au/events/local-government-tech-leadership-summit/ > ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ニューヨーク事務所】身近で感じる歴史、ルーズベルトアイランド ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 筆者は現在、イーストリバーに浮かぶ島、ルーズベルトアイランドに住んでいます。 マンハッタンから1駅というアクセスの良さもありながら、静かな生活を送ることが できるため、駐在員を含め多くの家族連れが生活する人気のエリアです。 のどかな雰囲気あふれるルーズベルトアイランドですが、少し島内を散策してみる と、多くの廃虚や古い建築物を見ることができます。そしてそれらを通して、ニュー ヨーク市の壮絶な福祉の歴史を感じることができるのです。 ニューヨーク市は1828年、当時ブラックウェル島と呼ばれていたその島を購入しま した。その後1921年までの約100年間、その島には刑務所や天然痘治療院、そして精神 病院が建設されました。ニューヨーク市はその島を「天然の隔離施設」として購入し たのです。 隔離された人々は、暴力や腐敗した食事、冷たい風呂といった虐待を受け、劣悪な 環境での生活を強いられることとなりました。特に女性精神病院では筆舌尽くしがた い虐待が日常的に行われていました。これらの虐待は1887年に出版された『Ten Days in a Madhouse』という本により白日の下となり、「障がい者の人権に配慮した医療の 確保」という障がい者福祉の基本理念が確立する契機となりました。 1973年、この島は「ルーズベルトアイランド」と改名されました。これはその生涯 をポリオ(急性灰白髄炎)と闘いながらも世界恐慌、第二次世界大戦という激動の時 代を生き抜いた大統領、フランクリン・ルーズベルトにちなみ命名されています。 ルーズベルトアイランドは、障がい者でありながらアメリカの歴史を作った偉大な 指導者の名前を冠し、忘れてはいけない暗い歴史を私たちに教えてくれているのです。 (ニューヨーク事務所 所長補佐 阿久津) < https://www.nps.gov/places/blackwell-s-island-new-york-city.htm > < https://www.nps.gov/subjects/tellingallamericansstories/disabilityhistory.htm > ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【北京事務所】見るだけでなく、体験して深く学べる、北京市の体験型観光 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 北京市では、様々な体験型観光の取り組みが行われています。 2024年、北京市は、外国人居住者・観光客に向けて、国際版のポータルサイトをリリ ースしました(日本語版:https://japanese.beijing.gov.cn/)。このサイトは、日 本語や英語をはじめとする9つの多言語に対応しており、北京市の観光地や最新のイ ベント情報などが多言語で配信されています。その中の一例では、「北京の文化観光 サイクリングルート21選」として、1北京市を南北に貫く「中軸線」(2024年世界遺 産登録)、2京劇の発祥の地をめぐる旅など、多数のサイクリングルートが提案され ています。観光客は、自分でサイクリングをして観光名所を周遊しながら、北京市の 文化を学ぶことができます。 世界遺産である故宮博物院、天壇公園、頤和園では日本語オーディオガイドサービ スがあります。実際に日本語ガイドを聞きながら散策することで、その文化や歴史を 学ぶことができます。 中国の伝統音楽劇である京劇や、太極拳などの体験もあります。例えば、京劇メイ ク(実際に体験者に京劇のメイクを施してもらうもの)や衣装体験は、一枚の絵画を 作り上げるようであり、京劇の魅力をより深く感じ、学ぶことができます。 体験型観光は、その都市の魅力を伝えるためにとても有意義であり、これからも、 中国各地における取り組み事例が注目されます。 (北京事務所 所長補佐 久保) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ロンドン事務所】桜がつなぐ縁 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 英国で生活する筆者ですが、先日、生まれて初めて太白(たいはく)という 種類の桜を見る機会がありました。太白は直径が5センチにもなる白い大輪の 花が特徴の桜で、その青空に映える見事な白い花弁に、またそれを英国で見る ことができるということに胸がいっぱいになりました。もちろん日本でも見る ことのできる桜ですが、実はこの桜を今日の日本で楽しむことができるのは、 英国人の桜研究家コリングウッド・イングラム氏のおかげです。 1880年にロンドンで生まれたイングラム氏は、1902年に初めて日本を訪れた ことをきっかけに、日本の豊かな芸術文化と自然のとりことなりました。特に 彼が心惹かれたのが桜で、多数の品種を取り寄せ、研究することに情熱を注ぐ ようになります。さらに、研究を進める中で、人気のある種のクローンが多数 つくられることにより、特定の品種が絶滅の危機に瀕していることを発見し、 50もの種類の桜を自宅の庭に植え、品種保護の取り組みをするようになりまし た。さらなる希少な桜を求めて、イングラム氏は1926年に再び日本を訪れます が、その際に江戸時代に絶滅した白い桜の木の絵を目にし、絵と同じ桜が自宅 の庭にあることに気づきます。彼のお気に入りの品種の1つでもあったこの桜 を日本に取り戻そうと、イングラム氏は知人とともに桜を里帰りさせることを 決意し、4年間に渡る試行錯誤の末、桜の接ぎ穂を日本に届けることに成功し、 これが無事に根付いて「太白」と命名されました。 イングラム氏の愛した太白の世界で一番大きな庭園が、英国北東部の街であ るアニックのアニック・ガーデンという公園に存在します。この4月10日、ク レアロンドン事務所も、この桜を縁としてアニック・ガーデンで日本文化の体 験ワークショップを実施しました。桜の鑑賞や書道や折り紙などを楽しむ来場 者の姿を見て、桜という存在がつなぐ英国と日本の縁に、感慨深い気持ちでい っぱいとなった貴重な経験でした。 (ロンドン事務所 所長補佐 野村) <参考文献・引用文献> ・太白(検索日:令和7年4月14日) < https://www.hananokai.or.jp/sakura-zukan/taihaku/ > ・Taihaku Cherry Blossom(検索日:令和7年4月14日) < https://www.alnwickgarden.com/the-garden/cherry-blossom/ > ・Kent botanist saved Japanese blossom from extinction(検索日:令和7年4月14日) < https://www.bbc.co.uk/news/articles/cn5xx7rydg2o > ・'Cherry' Ingram: The Englishman Who Saved Japan's Blossoms(検索日:令和7年4月14日) < https://www.japansociety.org.uk/review?review=614 > ・WHEN WEST MET EAST AND BLOOMED ITS CHERRIES(検索日:令和7年4月14日) < https://journal.linguaculture.ro/index.php/home/article/download/311/279 〉 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【編集・発行】一般財団法人自治体国際化協会(企画調査課) 〒102-0083 東京都千代田区麹町1-7 相互半蔵門ビル7F HP < https://www.clair.or.jp/ > TEL:03-5213-1722 FAX:03-5213-1741 Copyright(C) 2025 Council of Local Authorities for International Relations. 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