CLAIRメールマガジンバックナンバー
vol.383「中国における任期制公務員制度について」
※名刺交換をさせていただいた方にも配信しております※ ___________________________________ ■□■ □■□ CLAIRメールマガジン vol.383(2025年2月13日) □■□ 「中国における任期制公務員制度について」 ■□■  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ≪CLAIRからのお知らせ≫ 【INFO】(ニューヨーク事務所)オンラインセミナー「世界一の多国籍都市ニューヨークに学ぶ、スタートアップ施策」開催のお知らせ 【INFO】(経済交流課)これからの地方誘客"農泊"を核とした「グリーンツ ーリズム」によるインバウンド誘致 ~大田原市の事例~ 【INFO】(経済交流課)謎解き×既存の事業でインバウンドに新しい体験 ~佐賀県太良町「太良有明シークリングミステリー」の事例~ ≪海外事務所コラム≫ 【北京事務所】中国における任期制公務員制度について 【ニューヨーク事務所】 米紙「ニューヨーク・タイムズ」特集「2026年に行くべき52か所」に長崎・沖縄が選出 【ロンドン事務所】英国の住環境における湿気・カビ問題の実態と制度的対応 【パリ事務所】空港直通バス、2026年3月1日で廃止 【シンガポール事務所】学び直しが未来をつくる ― シンガポールに見るリスキリング社会の実現 【ソウル事務所】韓国の行政首都・世宗市に見る首都機能の移転と未来型の都市づくり 【シドニー事務所】屋外彫刻展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■CLAIRからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ 【INFO】(ニューヨーク事務所)オンラインセミナー「世界一の多国籍都市ニュ ーヨークに学ぶ、スタートアップ施策」開催のお知らせ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 当事務所では、日本の自治体関係者の皆様に参考となる情報をお届けするウェビナーシリーズを開催しています。 本セミナーでは、ニューヨークを拠点に日本企業の米国進出支援に従事する梅原氏を講師に迎え、ニューヨーク市の行政主導によるスタートアップ支援施策を中心に、日本の自治体がスタートアップ支援を推進するうえでの具体的な示唆や施策のヒントをご紹介します。自治体の経済関連部局や管内の支援機関、また地元のスタートアップ支援に携わる方々にとって有益な内容となっておりますので、経済関連部署の皆さまはもちろん、スタートアップ支援機関の方々へもぜひ本情報を共有していただけますと幸いです! 多くの自治体関係者の皆様のご参加をお待ちしております。 ■開催日時:2026年2月26日(木)午前10時から午前11時まで(日本時間) ■開催方法:オンライン(zoom) ■講師:Square Up New York CEO 梅原 靜香 氏 ■対象者:地方自治体職員等 ■言 語:日本語 ■申込方法:下記申込フォームからお申込みください。 < https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_lJeJa57zTXmbex17krq5oQ > (お問い合わせ先) (一財)自治体国際化協会ニューヨーク事務所 (担当:坂倉) E-Mail:jlgc@jlgc.org ___________________________________ 【INFO】(経済交流課)これからの地方誘客"農泊"を核とした「グリーンツ ーリズム」によるインバウンド誘致 ~大田原市の事例~  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 大田原市では、2012年に官民連携で農泊を核としたグリーンツーリズム事業を開始し、地域資源を活かした体験型観光を展開してきました。大型宿泊施設を持たず、農家の普段の暮らしに滞在する「農家民泊」を軸に、受入農家を最大の顧客と捉え、負担の少ない仕組みづくりと丁寧なコミュニケーションを重視しています。国内団体客で事業を安定させつつ、閑散期対策と農家の満足度向上を目的にインバウンド受入も開始。外国人との交流は地域への誇りや次世代の国際感覚を育みました。現在は有形文化財ホテルや農家ホテルへと展開し、持続可能な農村維持モデルとして注目されています。 本稿では、大田原市が取り組む「グリーンツーリズム」をテーマに、農泊を核としたまちづくりの実践例を紹介しておりますので、ご覧ください。 < https://economy.clair.or.jp/casestudy/inbound/10699/ > (お問い合わせ先) (一財)自治体国際化協会 経済交流課 TEL: 03-5213-1726 FAX:03-5213-1742 E-mail: keishin@clair.or.jp ___________________________________ 【INFO】(経済交流課)謎解き×既存の事業でインバウンドに新しい体験 ~佐賀県太良町「太良有明シークリングミステリー」の事例~  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 謎解きとは、用意された謎を解くアクティビティーであり、国内のみならず海外においても人気を集めています。 佐賀県太良町は、体験型観光に挑戦しようと、2024年夏に既存のレンタサイクル事業に周遊型謎解きを融合した「太良有明シークリングミステリー」を実施しました。2024年半ばから2024年末まで国内とインバウンドの旅行者合わせて約80人が参加。2025年に、参加者のフィードバックを取り入れて、新しいコースを2つ追加しました。 本事業は、インバウンド(訪日外客の誘致)に向けて、外国人が日本語を理解できていなくても同じ謎解きができるように、日本語と英語に対応するように設計されています。また、旅行者を引き寄せるようコースに名所のみならず穴場も入れることで、観光客に新しい魅力を発見するようにし、地域活性化にも一定の効果があるとみています。 URL< https://economy.clair.or.jp/topics/10664/ > (お問い合わせ先) (一財)自治体国際化協会 経済交流課 (担当:チー エンジャ) TEL: 03-5213-1726 FAX:03-5213-1742 Email: keishin@clair.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■海外事務所コラム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ___________________________________ 【北京事務所】中国における任期制公務員制度について  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 日本の公務員制度においては、行政の高度化、国際化などに対応するため、民間人材の登用を目的とした任期付職員制度が存在しています。中国においても、「聘任制」と呼ばれる公務員の任期付き採用制度が設けられており、近年、その活用が拡大しています。 「聘任制」は、2006年に施行された「中華人民共和国公務員法」の第16章(第95条から第100条)に規定されています。「中華人民共和国公務員法」には、任用(第95条、第96条)や雇用契約(第97条から第99条)、紛争の解決(第100条)のみが定められました。任期は1年から5年とし、国家機密に関わる業務を除く、専門性の高い職位と補助的職位に対して任用することができるとされています。 当初はその活用範囲と規模は限定的でしたが、制度の本格的な活用に向けて、2017年に「聘任制公務員管理規定(試行)」が施行されました。この規定は、任用の健全化、各機関による優秀な人材の確保と活用ニーズへの対応、公務員全体の専門性向上などを目的として掲げ、全国的に統一された制度基盤を整備しました。これにより、採用、契約管理、福利厚生などの規定がより明確化され、各地での実践的な導入が加速しました。 具体的な活用事例として、2024年に重慶市ではビッグデータ、化学工業、企業誘致・投資促進などの分野で、寧夏回族自治区ではスマート交通、都市建設、情報技術などの分野で、任期制公務員の募集が実施されました。今後も各分野において、こうした専門知識を有する人材の需要が増えることが予想され、柔軟な任用が可能な「聘任制」の活用はより拡大していくと推察されます。 (北京事務所 所長補佐 白木) 【参考文献】 < https://www.gov.cn/gongbao/content/2005/content_64223.htm > < https://www.gov.cn/zhengce/202203/content_3635277.htm > < https://rlsbj.cq.gov.cn/ztzl/cqsprzgwyzpzl/202405/t20240508_13186293.html > < https://nxdjw.gov.cn/nxdjgsgg/202403/t20240301_4991118.html > ___________________________________ 【ニューヨーク事務所】米紙「ニューヨーク・タイムズ」特集「2026年に行くべき52か所」に長崎・沖縄が選出  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 米国紙「ニューヨーク・タイムズ」は、毎年恒例の特集「2026年に行くべき52か所」を発表し、日本からは長崎と沖縄が選出されました。 長崎については、1945年に原子爆弾の投下を受けた歴史を踏まえつつも、街の中心部が壊滅を免れたことに触れ、核拡散の脅威が世界に広がる中で、訪れる意義がある地域として紹介されています。長崎出身の歌手・俳優である福山雅治さんが、昨年末の「第76回NHK紅白歌合戦」で「クスノキ-500年の風に吹かれて-」を披露したことは記憶に新しいところですが、記事では、市内にある樹齢約800年のクスノキをはじめとした、歴史と文化を感じられる見どころが取り上げられました。 一方、沖縄については、世界遺産に登録されている首里城正殿が、2019年の火災による焼失を経て再建が進み、今年秋にも再公開される見通しであることが紹介されています。あわせて、3月31日まで開催されている「琉球ランタンフェスティバル」など、地域の魅力を発信するイベントも注目点として挙げられました。 日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の日本全体での累計訪日外客数推計値は4,268万3,600人となり、前年を上回って過去最高を更新しました。中でも米国からの訪日客数は初めて300万人を突破し、米国は、中国、韓国、台湾に次いで4番目の「年間300万人超の訪日客を送る市場」となりました。 今回のニューヨーク・タイムズ紙による発表を契機に、日本全体はもとより、長崎や沖縄への国際的な注目が一層高まり、今後の観光振興や地域活性化につながることが期待されます。 (ニューヨーク事務所 所長補佐 梅田) 【参考文献】 < https://www.nytimes.com/interactive/2026/travel/places-to-travel-destinations-2026.html > < https://www.jnto.go.jp/statistics/data/_files/20260121_1615-1.pdf > < https://www.jnto.go.jp/statistics/data/_files/20251217_1615-1.pdf > ___________________________________ 【ロンドン事務所】英国の住環境における湿気・カビ問題の実態と制度的対応  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 英国で生活する中で避けられない問題の一つが、住居の「カビ」です。窓の結露や壁の黒ずみは決して珍しいものではありません。こまめに掃除をしていても完全に防ぐことは難しく、日常的な悩みとなっています。 英国の住宅は築年数が古いものが多く、分厚いレンガ造りのため、室内の湿気が外へ逃げにくい構造になっています。加えて、防犯や寒さの影響で窓を開ける機会が少なく、洗濯物も屋外ではなく室内で干すのが一般的です。こうした住宅構造と生活習慣が重なり、室内に湿気がたまりやすい環境が生まれてしまいます。 しかし、2020年に起きたある事件をきっかけに、この日常の悩みは社会問題として注目されるようになりました。社会住宅(公的に提供される低家賃の住宅)に住んでいた2歳の男の子が、カビに覆われた劣悪な住環境で暮らし続けた結果、呼吸不全で亡くなったのです。家族は何度も管理側に改善を求めていましたが、換気不足が原因とされ、十分な対応はなされませんでした。後の調査で死因が住宅内のカビであることが公式に認められました。 この事件で注目されたのは、カビそのものではなく「誰の責任として扱われていたのか」という点でした。英国では、カビは長く住民の生活習慣によるものだと考えられていましたが、実際には、古い住宅、修繕の遅れ、対応プロセスの欠陥といった条件が重なったものであることが明らかになったのです。 これをきっかけに、英国では「Awaab's Law」という新しい法制度が導入され、社会住宅の大家が問題を迅速に解決する義務を負うようになりました。この制度は単なる注意喚起に留まるものではなく、報告義務や対応までの時間制限まで定めた法制度で、日常の問題が、制度を見直す大きな転機となりました。 (ロンドン事務所 所長補佐 大藪) 【参考文献】 < https://www.theguardian.com/uk-news/2022/nov/15/death-of-two-year-old-awaab-ishak-chronic-mould-in-flat-a-defining-moment-says-coroner > < https://england.shelter.org.uk/professional_resources/news_and_updates/damp_and_mould_in_social_homes_ombudsman_case_studies > < https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2023/36 > ___________________________________ 【パリ事務所】空港直通バス、2026年3月1日で廃止  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ パリ=シャルル・ド・ゴール空港(CDG)と都心部を結ぶ直通バス「ロワシーバス」が、2026年3月1日をもって廃止されることになりました。イル・ド・フランス州の公共交通機関を統括するイル・ド・フランス・モビリティ(IDFM)は、廃止の理由として、高速道路A1号線の慢性的な渋滞や、ラッシュアワー時の中心部の渋滞を挙げています。 1992年12月に開通したロワシーバスは、約1時間でCDGとオペラ座を直通で結び、ビジネスマンや旅行者にとって使いやすい移動手段として定着してきました。空港内の各ターミナルに順番に停車し、地下にある鉄道駅まで降りる必要が無いため、特に荷物が多い旅行者にとって簡単に市街地まで移動できる手段だっただけに、この廃止という決断は現地メディアでも驚きをもって報じられました。 ロワシーバス廃止後は、バス利用の場合、メトロ14号線でパリ郊外北部のサン=ドニ=プレイエル駅まで向かい、同駅発の新設バス9517番に乗り次ぐ形が予定されています。従来の「都心から空港までバス1本」という選択肢は消滅し、CDGへの「直通の」公的移動手段は、タクシーを除けば、鉄道(RER B線)だけとなります。 こうした状況下で待望されるのが、空港とパリ中心部を約20分ノンストップで結ぶ直通鉄道「CDGエクスプレス」です。当初は2024年パリ五輪に合わせた開業を目指していました。しかし、財源確保のための航空券課税に対する航空会社の反発や、既存路線の改修を優先すべきとする周辺自治体からの抗議、さらには工期の遅れなども重なり、現在は2027年度末の開通予定へと延期されています。 既存の鉄道(RER B線)はパリ中心部から郊外、空港を繋ぐ主要な路線ではあるものの、ストライキや工事により終日運休することもあり、その際には臨時バスを乗り次いで移動することになります。また、通勤電車であるため、荷物の多い観光客にとっては肩身が狭い思いもあります。ロワシーバス廃止後は、CDGエクスプレスの一日も早い開通が一層望まれるのではないでしょうか。 (パリ事務所 所長補佐 佐々木) 【参考文献】 < https://www.autoroutes.sanef.com/fr/autoroute-A1-autoroute-du-Nord-Paris-Lille > < https://www.lemonde.fr/archives/article/1992/12/06/ile-de-france-seine-et-marne-paris-roissy-en-bus-direct_3924351_1819218.html > < https://www.lefigaro.fr/conjoncture/la-navette-roissybus-qui-relie-paris-a-l-aeroport-charles-de-gaulle-sera-supprimee-en-2026-20251207 > < https://actu.fr/ile-de-france/paris_75056/roissybus-la-navette-qui-relie-paris-a-l-aeroport-charles-de-gaulle-va-etre-supprimee-debut-2026_63540064.html > < https://cdgexpress.com/fr/taxe-billets-davion-pour-financer-cdg-express > < https://www.lexpress.fr/economie/surcout-du-projet-rejet-des-ecologistes-le-charles-de-gaulle-express-verra-t-il-le-jour_2134808.html > < https://www.lemonde.fr/economie/article/2022/04/28/la-justice-valide-la-creation-du-futur-train-rapide-cdg-express-entre-paris-et-l-aeroport-de-roissy_6124076_3234.html > < https://cdgexpress.com/fr/ > ___________________________________ 【シンガポール事務所】学び直しが未来をつくる ― シンガポールに見るリスキリング社会の実現  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 近年、日本でも地域の人材不足や産業構造の変化に対応するため、「リスキリング」や「生涯学習」が重要な政策課題として注目されています。こうした中、シンガポールは早くから国を挙げて人材育成に取り組んできました。その代表的な施策が、2015年に開始された「Skills Future(スキルズフューチャー)」です。 Skills Futureは、原則として25歳以上のすべての国民を対象に、年齢や職業を問わず学び直しの機会を提供する制度です。政府は個人に対して教育クレジットを付与しており、初回に500シンガポールドルのクレジットが付与されます。さらに、中高年層を対象とした追加支援も行われています。多くの認定講座では受講料の7~9割程度が政府補助の対象となり、自己負担を抑えながら受講できる点が大きな特徴です。 講座内容は、IT・デジタルスキル、データ分析、AI基礎といった先端分野に加え、会計、介護、製造業技能、観光・サービス分野など幅広く用意されています。職業訓練校やポリテクニック(中学卒業後に進む3年制の高等専門学校)、大学、民間教育機関が実施主体となり、働きながらでも柔軟に受講できる体制が整えられています。 また、業界団体と連携して職種ごとの技能基準である「Skills Framework」を策定し、将来必要とされるスキルを明確化している点も特徴です。個人は自身のキャリア形成を見通しやすくなり、企業側も計画的な人材育成を進めることが可能となっています。こうした官民連携の仕組みにより、学び直しを社会全体で支える基盤が構築されています。 近年はデジタル化や脱炭素化の進展を背景に、ICT分野やグリーン産業関連の講座が拡充され、受講者も年々増加しています。地域のコミュニティークラブなどでは、住民が気軽に参加できる短期講座や交流型の学習活動も行われ、学びが日常生活の一部として定着しつつあります。 行政が学びの「場」を直接提供するのではなく、費用支援と情報提供を通じて住民の主体的な学びを後押しするシンガポールの取り組みは、日本の自治体にとっても、人材育成や地域活性化を進める上で応用可能な示唆といえるでしょう。 (シンガポール事務所所長補佐 名島) 【参考文献】 < https://www.skillsfuture.gov.sg > < https://www.ial.edu.sg/getmedia/4cdd51d2-c14b-42aa-90ab-30f584c1daf3/annual-report-2023.pdf?ext=.pdf > < https://oecd.org/content/dam/oecd/en/publications/reports/2023/03/oecd-skills-strategy-southeast-asia_c50c9e28/923bfd03-en.pdf > ___________________________________ 【ソウル事務所】韓国の行政首都・世宗市に見る首都機能の移転と未来型の都市づくり  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 韓国の新たな行政首都を目指して2012年に発足し、2030年までの開発が予定されている世宗(セジョン)特別自治市(以下「世宗市」という。)。本稿では、世宗市発足の背景や、首都機能の移転の現状、都市としての未来像について紹介します。 韓国では、人口減少や少子化、首都圏と地方の格差といった韓国の構造的な課題に対応するため、2002年頃から首都機能の移転に関する議論が始まり、2012年に、地域開発と国家均衡発展、国際競争力強化に資することを目的に、国内で唯一の「特別自治市」として新たな行政首都の役割を担うべく世宗市が発足しました。 発足以降、インフラの整備や中央省庁の移転が計画的に進められ、2025年11月現在では45の行政機関と16の国策研究機関が移転を完了しています。これは、全ての中央省庁の約67%に相当する数字です。今後、大統領世宗執務室や国会世宗議事堂の建設も予定されており、最高裁判所の移転も検討されているところ、行政・立法・司法の機能を備えた実質的な行政首都の完成に向けた取り組みが進められています。 移転した行政機関などが集中する市内の「行政中心複合都市」エリアでは、まちづくりの文脈においても先進的な取り組みが進められています。都市整備の分野では、市内中心部である同エリアの半分以上が緑地として整備されており、湖公園や樹木園等、自然と共存する国内最大のグリーンエコシティーが広がります。また、居住空間についても、小学校を中心に、子供達が安全に通学できる範囲を生活圏として設定し、その中に商店や公園、コミュニティーセンター等を設置する「近隣住区」の考え方に基づいた都市整備が進められています。 これらハード面の整備に加えて、小学校、中学校及び高校における給食の無償化や保護者同士の育児コミュニティーの運営など、特に子育て分野におけるソフト面の支援を世宗市が主体となって充実させました。これにより、世宗市は韓国の公的な研究機関である地域経営院が発表した「韓国で最も暮らしやすい都市(2024年)」で1位に選ばれ、また、合計特殊出生率は韓国の広域自治体の中で1位を記録(2024年)するなど、暮らしやすいまちづくりに関連した各種施策の成果が着実に蓄積されています。中でも、国全体として人口減少局面を迎える状況で、発足した2012年から2025年11月現在までに人口が約29万7千人も増えている点(約10万人から約39万7千人へ増加)は特筆すべき成果と言えます。 その他、先端技術分野で自律走行車に係る実証特区の整備や、教育分野で特殊目的高校(国際高校や科学高校等)を含めた学校計150校の設立など、各分野における取り組みが推進される中で、韓国の新しい行政首都がどのように成熟していくのか、今後も注目が集まりそうです。 (ソウル事務所 所長補佐 佐岡) 【参考文献】 < https://kosis.kr/visual/populationKorea/PopulationDashBoardMain.do > < https://www.sjmorning.kr/news/articleView.html?idxno=7598 > < https://www.daejonilbo.com/news/articleView.html?idxno=2126767 > < https://www.clair.or.kr/basic/korea/korea_local.asp > < https://kirim.kr/activity/?bmode=view&idx=25785680 > チャン・ミンジュ(世宗特別自治市政策企画官)、行政首都世宗、第31回日韓地域政策研究会、2025年11月、P131-P140 ___________________________________ 【シドニー事務所】屋外彫刻展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 文化芸術事業の中には、行政が主催するのではなく、非営利団体などによる取り組みを、公共空間の提供や助成金を通じて開催を後押しするとともに、企業や市民による支援を得て、継続的に実施されているものがあります。シドニーで開催されている大規模な屋外彫刻展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」は、そうした事例の一つと言えます。 非営利団体の「Sculpture by the Sea Incorporated」が主催する本イベントは、シドニー東部のボンダイビーチからタマラマビーチにかけての約2kmの海岸遊歩道を会場に、毎年春に開催されています。海を望む遊歩道には90点を超える彫刻作品が並び、入場は無料です。屋外の公共空間を活用し、誰もが自由に鑑賞できる形式を採ることで、例年40~50万人が訪れる人気のイベントとなっています。27回目を迎えた2025年は、10月17日から11月3日まで開催され、日本を含む18か国のアーティストの作品が展示されました。 行政の関わりとしては、地元自治体が、会場となる公共空間の利用許可や維持管理のほか、会場の安全計画や作品の設置場所について主催団体と協議を重ねて調整し、来場者の安全確保を図っています。また、会場が所在するニューサウスウェールズ州(NSW州)所管の芸術支援機関「Create NSW」が、助成金による資金面での支援を行っています。 本イベントは、こうした助成金に加え、企業スポンサーの協賛や市民からの寄付を主な財源として運営されています。2025年は、資金不足により、一時は開催が危ぶまれましたが、資金難が報道されると、即座に企業や市民からの追加支援が相次ぎ、予定どおり開催に至りました。 こうした経緯からは、本イベントを「地域の文化資源」として守ろうとする、いわゆるシビックプライドが感じられ、民間セクターや市民による支援が、文化芸術事業を支える大きな力となりうることを示しています。また、こうした過程を通じて、イベントへの支持がさらに広がるとともに、文化芸術事業が地域への誇りや愛着の醸成にもつながる好循環を生み出している点で、示唆に富む事例と言えるのではないでしょうか。 (シドニー事務所 所長補佐 宮内) 【参考文献】 < https://sculpturebythesea.com/bondi/ > < https://www.facebook.com/sculpturebythesea > < https://www.abc.net.au/news/2025-09-26/bondi-sculpture-by-the-sea-to-go-ahead-2025-due-to-lifeline/105819510 > < https://www.waverley.nsw.gov.au/media/documents/council/plans_of_management/Tamarama_Park_and_Beach_Plan_of_Management_2023.pdf > 【編集・発行】一般財団法人自治体国際化協会(企画調査課) 〒102-0083 東京都千代田区麹町1-7 相互半蔵門ビル7F HP:< https://www.clair.or.jp/ > TEL:03-5213-1722 FAX:03-5213-1741 Copyright(C) 2026 Council of Local Authorities for International Relations.All Rights Reserved. 許可なく転載することを禁じます。 配信解除は、下記の登録解除フォームにより手続きをお願いします。 < https://www.clair.or.jp/j/mailmagazine/index.html#unsubscribe >
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