自治体の海外活動支援
海外事務所ごとの個別事項:ロンドン事務所
1 調査内容の設定
―調査の趣旨は、自治体を訪問し、インタビュー調査を行う上で適当か―
イギリスの地方自治について調査をする場合には、まず、調査対象が中央政府の政策なのか地方自治体の政策なのかを理解した上で、その内容を設定する必要があります。イギリスでは、日本以上に政党政治が盛んであり、政権党の選挙公約が政府の政策となって具現されています。そして、政党の公約は、地方自治についてもかなり具体的な内容まで踏み込んで綱領として提示しています。このため、「地方分権」や「行財政政策」といった中央政府主導で進められている政策がテーマの場合、地方自治体で対応することが困難なことが多くあります。調査内容を具体的に設定し、調査対象を十分に検討した上で、訪問する組織の選定を行わなければなりません。
また、イギリスと日本では、地方自治体の事務の範囲が部分的に異なっています。医療や農林水産政策のように、日本では地方自治体が行っている事務であっても、イギリスでは他の機関が所管していることがありますので、事前にイギリスの地方自治体の事務の範囲を研究しておく必要があります。
2 訪問目的の整理
―調査内容が具体化されているか―
イギリスの地方自治体の職員の多くは、特定分野に精通したスペシャリストです。このため、制度の概論や一般的評価といった事柄には答えられないことがあります。また、調査の内容が多岐にわたる場合には、職員一人では対応できず、異なった部署の複数の職員が必要になり、訪問する相手方に過度の負担をかけてしまうおそれがあります。こうした事情から、ホームページ等を活用して自ら文献調査を行うなど、基礎的な知識は事前に収集・整理しておくようにしてください。訪問調査はこれを補完するものとして、訪問先を必要最小限にとどめ、質問内容も個別具体的に用意しておかなければなりません。訪問調査は、相手方の執務時間を拘束することになるため、安易な訪問は慎むべきです。単なる表敬訪問には、対応してもらえないと考えておいた方がよいでしょう。
なお、イギリスでは、ビジネスは可能な限り電話や手紙、Eメールなどで済ませ、真に必要な場合以外は訪問を避ける傾向が強いです。訪問に当たっては、このような事情を十分に理解しておいてください。
3 訪問の時期及び日時の指定
―訪問を希望する時期及び日時は、相手方の事情を配慮しているか―
イギリスでも、アポイントメントを取ってから訪問することが常識です。1月以上前に申し込むように心がけてください。2週間を切った申込みは、ショート・ノーティス(short notice)だという理由で断られることが非常に多いです。一般的に、夏(7~8月)と冬(12月)に長期の休暇を取る人が多いため、アポイントメントを取り付ける際には、このことを十分に考慮して早めに準備する必要があります。可能な限り長期休暇の時期の訪問は避けましょう。加えて、土日・祝日のアポイントは受け入れてもらえない可能性が高いことも訪問日程を検討する際にご注意ください。
なお、訪問して対応してもらう時間は、1時間が通常です。相手方を長時間拘束することは避けるとともに、面会時間が大幅に延長しないよう気をつける必要があります。
また、訪問希望日時については、相手方が選択できるよう複数の候補を示す方が、アポイントメントが取れる可能性は高まります。しかし、この場合、他の機関等とアポイントメントが重複しないよう、十分に注意してください。
4 訪問の趣旨及び質問事項の通知
―訪問の目的を相手方に通知しているか―
限られた時間の中で効率的に調査を行うには、訪問の趣旨や質問事項を相手方に事前に通知しておく必要があります。また、通訳を頼む場合には、通訳者と連絡を取り、質問事項や参考資料を事前に提供しておくのが望ましいです。なお、事前に通知した質問事項から大きくかけ離れた質問をすることは、特別な場合を除いて慎むべきです。
なお、研修でイギリスの地方自治体を訪問する場合には、日本の海外研修のような制度はイギリスにはありませんので、なぜイギリスまで訪ねてくるのか相手方には理解できないということを踏まえた上で、研修の趣旨や目的を明確に説明することができるようにしておかなければなりません。
5 現地での留意事項
―無理のある日程を組んでいないか―
地方自治体を訪問する場合には、アポイントメントの時間に絶対に遅れないように余裕をもってスケジュールを組むように心がけてください。訪問先が郊外の場合には、乗り継ぎ時間やダイヤの乱れなどにより、想定以上に時間がかかる場合があります。また、ロンドン市内でさえも、ダイヤの乱れや交通渋滞などにより、移動に思わぬ時間を要することもあります。
訪問場所は、ロンドン市内であっても、多くても1日当たり午前と午後との2箇所、その他の都市では、移動時間を考慮して1日当たり1箇所に限定することが望ましいです。
また、イギリスの治安は比較的良好ですが、トラブルに巻き込まれるおそれのある地域を避け、安全に十分に気を配って行動してください。事前に、外務省や海外事務所、旅行代理店などから最新の情報を収集しておくように心がけてください。
6 その他
(1)イギリス以外の活動支援対象国についても調査、訪問先のウェブサイトを見るなどし、調査内容の設定(出来るだけ具体化)、調査日程(余裕を持たせる)については、イギリスに準じて考えてください。
(2)ロンドン事務所に活動支援依頼する前に、すでに自らまたは他機関を通じてアポイントメント取得を試みて断られている場合、必ずその旨知らせてください。重ねてアポイントメントの申し込みをした場合、繰り返し断られるだけでなく、相手先との信頼関係を損ねてしまう場合があります。これにより、他の地方自治体の将来のアポイントメントにまで影響が生じかねません。
(3)研修目的の活動支援依頼については、基本的にアテンドは行っていません。
(4)イギリスを含めヨーロッパ各国では、訪問が有料となる場合があります。